ふるさと納税で控除を受けるには、申込みとは別に税金控除の手続きが必要です。しかしふるさと納税を利用した方の中には「年末調整でふるさと納税の控除が受けられる」と思い込んでいる人もいるのではないでしょうか?
結論から言いますと、年末調整でふるさと納税の控除は受けられません。
そこで今回はなぜ年末調整でふるさと納税の控除ができないのか、その理由と正しい税金控除の手続き方法を解説します。
年末調整でふるさと納税の控除ができない理由
年末調整でふるさと納税の税金控除の手続きはできません。なぜなら、年末調整をする時点ではふるさと納税の寄附総額を確定できないからです。
ふるさと納税の申込み期間は、1月1日~12月31日までの1年間。年末調整が行われる12月の給料日までにふるさと納税の寄附総額が確定しないので、税金控除の処理ができないのです。そのため、ふるさと納税で税金控除を受けるには年末調整とは別に、税金控除手続きが必要となります。ふるさと納税だけでなく医療費控除や住宅ローン控除(1年目)などを受けるときも、同じことが言えます。
ふるさと納税の税金控除手続き
年末調整とは別に行うふるさと納税の税金控除手続きには、次の2つの方法があります。
ここからは、それぞれの税金控除手続きを詳しく見てみましょう。
ワンストップ特例制度
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税の申込み後に確定申告なしで税金控除の手続きができる制度で、住民税の控除が受けられます。企業から給与をもらっている会社員はこの制度を申請できますが、ある一定の条件を満たす必要があります。
※1:6回以上ふるさと納税を行っても、5自治体以内ならワンストップ特例制度の利用可能。
※2 確定申告が必要なケースに該当していない給与所得者のこと。
条件を満たした方は、ワンストップ特例制度の必要書類を揃えましょう。
寄附金税額控除に係る申告特例申請書は、ポータルサイトでふるさと納税を申し込むときに「ワンストップ特例制度を利用する」という選択肢をONにする、または総務省公式サイトからダウンロードできます。
申請書の本人確認書類には、マイナンバーカードの両面コピーが使用できます。マイナンバーカードがない場合は、次のいずれかの資料の準備が必要です。
《マイナンバーカードがないときの本人確認書類》
- ・マイナンバー通知カードまたは住民票の写し+パスポートまたは運転免許証の写し
- ・マイナンバー通知カードまたは住民票の写し+健康保険証・年金手帳・自治体が認める証明書の中から2点以上の写し
なお、ワンストップ特例制度の申請後、翌年1月1日までに引っ越しや結婚などで住所や名前が変更した場合、変更手続きが必要です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
必要書類が準備できたら、3ステップで税金控除の手続きをすることができます。
- 1.ふるさと納税を申し込むときに「ワンストップ特例を利用する」という選択肢をONにする、または別途「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」をダウンロード
- 2.「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」の必要事項を記入
- 3.寄附した自治体に申請書を送付する
ワンストップ特例制度に必要な「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」は、総務省公式サイトまたは、ふるさと納税ポータルサイトでダウンロードできます。
確定申告
確定申告とは1年間で得たすべての所得と所得税や税金控除を算出し、税金の過不足がないか確認する手続きです。会社員の場合、基本的に年末調整でこの手続きが完了しているので、確定申告は不要です。
ただし、会社員であっても、次のケースに当てはまる方は、確定申告が必要となりますのでご注意ください。
ふるさと納税の税金控除手続きを確定申告で行うと住民税と所得税の控除が受けられます。
確定申告をするには、資料を揃えて確定申告書を税務署に自ら提出する必要があるので、ワンストップ特例制度よりも手間と時間がかかるので早めの準備がおすすめです。
まずは、確定申告の必要書類を準備しましょう。
【注釈】※5 本人確認証明書はワンストップ特例制度の申請者の確認証明書と同じものです。
寄附金に関する証明書は、国税庁指定のふるさと納税ポータルサイトから発行されます。利用しているポータルサイトが指定対象になっているか確認してくださいね。
寄附金に関する証明書には、ふるさと納税ポータルサイトで申込んだ寄附の履歴が記載されています。今までのように、各自治体から届く寄附金受領証明書を1枚ずつ確認しながら寄附額を自分で合算する必要がありません。また、証明書を紛失した際に、再発行を依頼する必要もありません。寄附金に関する証明書だけで手続きできるので、間違いや手間を減らすことができて大変便利です。
【国税庁が指定した特定事業者とポータルサイト一覧】
ポータルサイト名 | 特定事業者 |
ふるなび | 株式会社アイモバイル |
さとふる | 株式会社さとふる |
楽天ふるさと納税 | 楽天グループ株式会社 |
ふるさとチョイス | 株式会社トラストバンク |
マイナビふるさと納税 | 株式会社マイナビ |
ふるさとパレット | 東急株式会社 |
ふるさとプレミアム | 株式会社ユニメディア |
ふるさとぷらす | 株式会社エスツー |
セゾンのふるさと納税 | 株式会社クレディセゾン |
ANAのふるさと納税 | 全日本空輸株式会社 |
三越伊勢丹ふるさと納税 | 株式会社三越伊勢丹 |
ふるさと本舗 | 株式会社ふるさと本舗 |
JALふるさと納税 | 株式会社JALUX |
au PAY ふるさと納税 | KDDI株式会社 |
ふるラボ | 朝日放送テレビ株式会社 |
ふるさと納税ニッポン! | アイハーツ株式会社 |
必要書類が揃ったら、確定申告書の作成を行います。
作成方法は①手書きと②サイト上で作成の主に2種類です。
作成方法 | 申告書入手先 |
手書き | 【国税庁】確定申告書等ダウンロードはこちら |
サイト上で作成 | 【国税庁】確定申告書等作成コーナーはこちら |
手書きで申告する際は、確定申告の書類を税務署でもらうほか、国税庁のホームページでダウンロード・印刷できます。作成後は必要書類を添えて税務署に直接持参、もしくは郵送しましょう。
ウェブサイト上での作成には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」が便利です。
その際に、令和3年度から「マイナポータル連携」という便利な機能を使うことができるようになりました。マイナポータル連携とは、政府が運営するオンラインサービス「マイナポータル」から、確定申告や年末調整に必要な控除証明書等の情報を一括で取得し、各申告書の該当箇所へ自動入力する機能です。
確定申告の手続きがかなり楽になるので、マイナンバーカードを持っているならおすすめの方法です!医療費控除や住宅ローン控除関係、国民年金保険料、生命保険、地震保険等、幅広く対応しています。
マイナポータル連携の利用には、マイナンバーカードのほかにマイナンバーカード読み取り機能付きのスマートフォン、もしくはICカードリーダーが必要です。お使いのスマートフォンが対応機種かどうかは、マイナポータルで確認できます。
また、マイナポータル連携を初めて利用する際は、事前設定が1度必要です。次年度からは設定不要で、毎年情報を取得できます。税務署へ取得したデータ(原本)を送信するので、書面の証明書の提出や保管も不要ですよ。(※e-Tax送信する場合のみ)
国税庁のサイトやyoutubeチャンネルでも解説されているのでチェックしてください。
マイナンバーカードを持っていない方は本人確認書類の提示が不要な「e-Tax」での手続きがおすすめです。利用するためには、事前に「開始届出書」を提出し、利用者識別番号を取得してくださいね。提出期限が近くなると窓口が混雑するため、e-taxでの送信または郵送が便利ですよ。
e-taxを利用する場合は、ふるさと納税の申込みをしたポータルサイトから「寄附金控除に関する証明書」をXMLファイル形式でダウンロードしましょう。※3確定申告作成時にダウンロードした「寄附金控除に関する証明書」のXMLファイルをアップロードするだけで、ふるさと納税の寄附額や寄附先が自動入力されます。
出典:国税庁
【注釈】※3「寄附金控除に関する証明書」のXMLファイルのダウンロード方法は、ふるさと納税を申し込んだ各ポータルサイトの手順に従ってください。
ふるさと納税の税金控除手続きの期限
ふるさと納税の税金控除手続きの期限は、ワンストップ特例制度と確定申告でそれぞれ異なるので注意が必要です。
申請方法 | 期限 |
---|---|
ワンストップ特例制度 | 翌年の1月10日 |
確定申告 | 翌年の3月15日 |
ワンストップ特例制度の申請が間に合わなかった場合は、確定申告で税金控除手続きをすれば、その年の税金控除を受けられます。
ふるさと納税の確定申告の期限が過ぎたら控除は受けられない?
「確定申告を忘れて期限が過ぎてしまった…」
忙しい毎日に、気づいたら確定申告の期限が過ぎてしまった人もいるでしょう。でもご安心ください。ふるさと納税をした翌年の1月1日から5年以内であれば、「還付申告書」の提出により税金控除を受けられます。
還付申告の手続きは確定申告と同じで、5年以内であればいつでも申告できます。ふるさと納税で税金控除の手続きを忘れていた方は、思い出した時点で早めに還付申告の手続きをしましょう。
ふるさと納税 年末調整でよくある質問
ふるさと納税 年末調整でよくある質問とその回答をご紹介します。
それでは1つずつ見ていきましょう。
年末調整でふるさと納税の寄附金証明書は提出する?
年末調整でふるさと納税の寄附金証明書の提出は不要です。なぜなら、年末調整でふるさと納税の税金控除の手続きはできないからです。ふるさと納税の税金控除手続きには、次の2つの方法があります。
ふるさと納税の税金控除手続きは年末調整前にすべき?
ふるさと納税の税金控除手続きは、必ずしも年末調整前にする必要はありません。なぜなら、ふるさと納税の税金控除の手続きは、年末調整でできないからです。よって、寄附金額の総額が確定する翌年の1月1日以降に行っても問題ありません。
ただしワンストップ特例制度を利用する場合、申請期限は翌年の1月10日までなので、早めの申請がおすすめです。
ふるさと納税の税金控除手続きの方法は?
ふるさと納税の税金控除手続きは、次の2つの方法があります。
それぞれ税金控除の手続きの期限が異なりますのでご注意ください。
申請方法 | 期限 |
---|---|
ワンストップ特例制度 | 翌年の1月10日 |
確定申告 | 翌年の3月15日 |
もしワンストップ特例制度の手続きが間に合わなくても、確定申告をすればその年の税金控除を受けられます。
ふるさと納税の確定申告が間に合わなかったときはどうする?
ふるさと納税の確定申告が間に合わなくても、寄附をした翌年1月1日から5年以内に還付申告をすれば、税金控除を受けられます。還付申告は5年以内であれば、いつでも申告できるので、早めの手続きがおすすめです。
まとめ
年末調整でふるさと納税の税金控除の手続きはできません。なぜなら、ふるさと納税の申込み期間は1月1日~12月31日までとなっており、年末調整を行う12月時点では、寄附金の総額が確定できないからです。
ふるさと納税の税金控除の手続きは、年末調整とは別に次のいずれかの方法を選択します。
年末調整をする多くの会社員の方は、確定申告なしのワンストップ特例制度が利用できます。また、確定申告もマイナポータル連携の対象となりました。ふるさと納税の利用をためらう原因の1つである、確定申告の手続きが簡素化されたことで、ますますふるさと納税が利用しやすくなりました。今まで手続きがおっくうで、ふるさと納税を避けていた方も今年はぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
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